孤独のFIRE

天涯孤独・社会的孤立状態のアラフィフ親父がFIREという名の無職を続ける記録

「対外純資産」を当てにするとFIRE民全滅になるという話

今年もまた「国の借金」のニュースが来ました。

news.yahoo.co.jp

政府の借金の問題になると反論としてコメント欄で必ず出てくるのが、対外純資産の話です。要は彼らの言い分としては、これだけ資産があるんだからまだまだウチら借金できるんだろと言いたいみたいです。

データを見る限り確かに日本の対外純資産は世界1位です。ただしGDP同様ドイツに抜かれるのは時間の問題で、その上ドイツは日本と違って規律重視国なので、そうなった時円への信用が更に毀損される可能性は頭に入れておいて損はないと思います。

ただここで問題にしたいのは、そもそも政府の負債と対外純資産というのは相殺可能なのか?という話です。言うまでもなく「実質的に」売却可能なものでなければ借金の担保にはならない訳ですから、額だけでなく中身を精査しないといけない。

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資産の中でも直接投資というのは、日本企業が海外で法人を作ったり不動産を買った額です。これを「売られても戻ってこない円」として円安の原因と見る声もありますが、これも別の問題なのでここでは割愛します。

証券投資というのは説明不要かと思いますが、株や債券の事です。こちらは個人投資家に限らず企業であってもレパトリエーション・つまり日本で使う限りはドルで受け取って日本円に換金する事になるかと思います。

外貨準備金というのはあまり馴染みのない言葉かもしれません。前の二つは民間の資産ですが、これは違って政府のお金です。例えば急激な円安が来て食料や燃料を輸入するのが困難になった時、足しにする為に取っておく外貨の事を指します。

 

ここで最初に書いた話に戻ります。赤字の理由が社会保障費・死にかけの老人を数年長生きさせるために現役世代が犠牲になる構図の中、企業・政府・国民がもつ資産の中で、どれを換金するのが最も現実的なシナリオなのか。

まず企業が海外に持つ資産を売却する事はありえない。会社はともかく工場となると流動性の低さがネックになるし、そもそも縮小する国内市場に見切りをつけて海外進出したのに、虎の子を売り払ってしまったら大勢の失業者が出る。

そして政府の外貨準備金の目的はあくまで通貨危機予備費であり借金の返済ではないのでこれもありえない。これを許せばいざという時に食費や光熱費がべらぼうに上がり、結局馬鹿を見るのは庶民という事になる。

また外貨準備金の殆どは米国債なので、アメリカが政治的・経済的に売却を許すとも思えない。ドミノを並べるがごとく慎重に利下げのタイミングを見極めている局面で、米国債を一気に売却したらどうなるかは想像するに難くない。

 

ここまで読まれた方ならもうお気づきかと思いますが、結局残されたのはFIRE民や個人投資家が普段から恐れている最低最悪のシナリオ、資産課税で個人の金融資産を根こそぎ奪い取るしかないんです。

新NISAは非課税なんでしょ?と思う方も多いかと思いますが、あくまで「売却益は非課税」なだけで、金額そのものに課税しないとは一言も言っていません。最近も社会保障の算定額に金融商品を加算するという試案を紹介したばかりです。

また「非課税枠は永久に続く」とは言っているけど、そもそも新NISA制度が永久に続くという保証がない。無期限出場停止のスポーツ選手が半年後に復帰するような感じの軽いノリで、制度が変わるという可能性は十分あるのです。

 

勿論そうなると断言している訳ではありません。民間の資産で政府の負債をチャラにするシナリオは他にもあります。インフレ税もその一つで、今の円安誘導政策もその一環なんじゃないかと勘繰りたくもなります。

さっきの話は聞きかじりの知識でマウントを取る自称経済通の主張にマジレスすればそうなるよという仮の話と思っていただければ幸いです。ただしそういう耳障りの良い現実逃避の方が日本人受けするのも事実。

「つけ払いの出来る飲み屋がある事」と「つけ払いが無限に出来る事」は全く別の問題なのに「ただ食いできるの知らないんですね。もっと勉強して下さいね!」と講釈垂れる輩を見るにつけ、この国の将来はどうなるのだろうかと思い悩む訳です。

 

これは以前から書いている事ですが、日本でFIREする最大のリスクは日本が抱える莫大な借金と他人の足を引っ張る国民性。「税は財源ではない」とうそぶきながら金持ちが損するのは大歓迎という下衆な人種が、この国には大勢いるという事です。

逆に日本でFIREする上でのメリットは物価が安い割に治安やサービスの質が良い事だったのですが、長引く停滞と共にそれらの利点が薄れつつある事は、皆さんが身をもって実感されている事と思います。

正直ハンキン(半緊縮派)はカルト化してしまったので、彼らを改心させる事は不可能です。個人にできる防衛策は限られていますが、時間もリソースも限られている事に自分達だけでも気づき、普段から税の使い道に敏感になる事でしょうか。

あと付け足すなら、以前も書いた少子化対策の財源論議だけでなく、憲法改正論議・特に緊急事態条項には目を光らせておいたが良い。これが通過してしまうと先の最低最悪のシナリオが一気に現実味を帯びてくるので要注意です。