孤独のFIRE

天涯孤独・社会的孤立状態のアラフィフ親父がFIREという名の無職を続ける記録

リテラシーと軽々しく言うけれど

ちょっと前の話になりますが、楽天証券のトウシルというサイトで、マネーリテラシーに関する記事を見つけました。大学の1コマ=90分でマネーリテラシーに関する講座をするならこういう事を話したいという内容です。

一コマで、一生役立つマネーリテラシー講座

 

筆者の山崎元氏は経済評論家で「ほったらかし投資術」という著名な書籍でインデックスの長期保有という手法を一般にも広めた功労者の一人であります。正直言うと記事の内容自体には何のいちゃもんを付ける余地もありません。

ただ、自分がこのブログで以前それとなく言及した「投資の世界ではプロだけど金融の話になると聞きかじりで適当な事を言うインフルエンサー」というのが、実はこの山崎氏の事だったりします。要は記事に書いていない部分がダウト。

「世の中の金融商品の99%はクズ」と毒を吐く人物が、一方で統合政府論というトンデモに基づいて「国の債務は全く問題ない」と吹聴し、書籍の中でも日本国債をノーリスク商品として何度も紹介しているのに違和感を感じる訳です。

 

統合政府論を簡単に言うと「政府と日銀を一体としてみれば国の借金はチャラ」という考えですが、リテラシーが高い方ならそんなうまい話ある訳ないぞ・それでうまく行くなら他の国もやっているはずだとピンとくると思うんですよね。

「日銀は政府の子会社」というのも同じく統合政府論に基づく間違い。今はネット世論増税メガネがどうのとかまびすしいですが、増税の発生点はアベノミクスの尻ぬぐいであり、更に言うなら故安倍元首相にトンデモ理論を吹き込んだエセ学者とその信者。

山崎氏のインデックス投資を世に広めた功績は計り知れないですが、一方この国が「実質的な」財政破綻に陥った時は、彼ら統合政府論者も道義的責任の一端を担うという事は押さえておいて欲しいと思います。

(この「実質的」という但し書きを付けないと、国は幾らでも紙幣を発行できるので破綻しないという幼稚な議論になる所も陰謀論者の残念な所ですが、自分はもう諦めの境地に達しているので議論をする気はありません)

 

こういうリテラシーを語る人間が一方では陰謀論を流布してしまう所に、メディアリテラシーの難しさがあると思います。結局人間は弱い生き物なので自分に都合の良い情報を知りたがるし、陰謀論者は庶民の他責志向につけこむのがうまい。

特にネットの世界ではエコーチェンバーと言うのだそうですが、SNSで似た思想の人とつるんでいるとその偏った思考が永遠に増幅していく。そうして陰謀論にどっぷり漬かってしまうともう救いようがない。

間違った知識を貯めこんでいるのに「勉強して下さい」と平気で人様に説教し、間違いを指摘しても逆切れされるだけ。下種の勘繰りで相手の出自ばかり指摘して分かった気になるし、正義に酔っているので言葉が荒い。

皮肉な話ですが「日本は財政破綻しない」と考える大衆が増えている事自体が財政破綻のリスクになっているので、自分なんぞは財務省を悪者にしてヤフコメを荒らす連中をしり目に、くわばらくわばらと思いながらせっせと資産をドルに移している訳です。

 

資産運用について勉強しようと思った時に最初に出会った本が「ほったらかし投資術」だった人はその時点で勝ち組です。逆に不動産投資やFXについての本を手にした人は、相当の苦労が待っている。

一方で国の財政について勉強しようと思った時に最初に出会ったのがトンデモ論者で「税は財源ではない」とか「国の負債は国民の資産」とか連呼するようになると、直接の影響はないものの議論を先延ばしするだけで、いずれ国全体が負担を強いられる事になる。

結局国民のレベルを超えた政治家は出ないという事です。一人一人がリテラシーを高めていればまた違った未来が待っていたのかもしれませんが、今となっては手遅れ。自分だけでも助かる方法を学ぶしかないと思っています。

リテラシーと軽々しく言うけれど、それこそ経済学部に4年間通うか、最初に出会った人が正統派という僥倖に出会わない限り、金融リテラシーは身に付かない。人は弱いし頑固な生き物なんだという事を、山崎氏は教えてくれた気がします。