孤独のFIRE

天涯孤独・社会的孤立状態のアラフィフ親父がFIREという名の無職を続ける記録

安い日本とおもてなし文化の終わり

ちょっと前にヤフー経由で興味深い記事を見つけたのでご紹介です。外国人記者がマクドナルドで22分待たされてたという体験談から、日本のサービスの質は強みでもあり、同時に弱みでもあるという分析です。

行列はのび、注文は来ない… 英紙が憂慮…日本が誇る「質の高いおもてなし」が劣化していく

記事中には日本のサービスの質が落ちている理由は労働力不足にあり、サービス提供側の対応はステルス値上げ・記事中の表現を借りれば「手の込んだ茶番劇」が横行しているという分析です。本文から少し引用します。

企業のこの対応は、消費者との関係を抜本的に変えることを最大限、先延ばしにしようとしていると言える。 (省略) 他の国なら、肩をすくめながら、状況に応じてサービスの質を落とすだろう。だが、日本の企業や飲食店はそれをかたくなに拒否してきた。その選択によって、自らの首を絞めているのだ。

 

これを読んだとき自分は、日本の財政問題と構造が似ているなと思いました。増税も支出削減もせずに国債の発行に頼り、御用達学者の口を借りて詭弁を弄する様は、まさに手の込んだ茶番劇。そして金利が上昇しつつある今先延ばしは限界に来ている。

これから日本に待っているのは社会の分断と限られたリソースの奪い合い、大企業vs労働者・年寄りvs若者・金持ちvs貧乏人・保守vsリベラルの血で血を洗うバトルロイヤルという訳です。

もう一つ思い出したのは、ひろゆきがステルス値上げについて語った動画の中で「日本では騙す側より騙される側の方が悪いという考え方が主流になった」と発言した事。自分は特別ひろゆきのファンではないですが、この言葉は何かにつけて思い出す。

最近だとあの中古車販売業のビッグモーターがスキャンダルを起こし、その後業界第2位のネクステージも不正が報じられた時。どんな事件も例外か氷山の一角かというのは難しい問題ですが、貧すれば鈍するとはまさにこの事だなと思いました。

 

サービスに話を戻すと、自分はFIRE系インフルエンサーが「安くて美味しい物が食べられるから日本は良い国だ」とか言うのを本当に苦々しい思いで見てきました。質の高いサービスが提供されているのも、結局は低賃金労働の犠牲で成り立っているからです。

本人は愛国心をアピールしたつもりかもしれませんが、労働力を提供していない人間がそれを言ってしまえば嫌味でしかない。安い日本で労働者を搾取すると宣言したも同じで、言われた側は良い気はしないでしょう。

そして怒れる労働者がどうなるかと言えば、ある者は他所でカスハラして憂さ晴らし、ある者は病むまで働き退職後は生活保護生活、ある者はばら撒きと富裕層課税を訴える極左政党にのめりこむかもしれない。それこそリソースの奪い合いとなる訳です。

 

労働者不足は長期的にはAIやロボットの進歩で補える可能性がありますが、一朝一夕には行かないでしょう。短期的には移民を受け入れるかお年寄りが死ぬまで働くしかなく、そしてお年寄りが死ぬまで働く社会はアーリーリタイアが恨まれる社会と同義。

これは何度か書いていますが、国の貧困化や他人の足を引っ張る国民性は日本独特のFIREリスクであり、ここから目を背けているとそう遠くない将来金融課税の強化で生活もままらなくなると自分は考えています。

だからこそリタイア民にもノブレス・オブリージュ、つまり地位に伴う責任のような考え方が必要だと思うのですが、FIREの概念が生まれてからまだ日が浅く、何よりその第一人者が「安くて美味しい日本サイコー」論者な訳です。

普段投資手法について講釈する人物が「安い物には訳がある」という真理について知らないはずがなく、まして社畜として搾取されてきた身なら尚更なのですが、配慮が足りないのかは分かりませんが、楽観的過ぎるのではというのが偽らざる本音です。

 

サービスだけでなく犯罪率も経済力に見合う所まで落ちて、その上税金はべら棒に高く国民はみんな暗い顔。そうなったら意識高い系インフルエンサーも手のひらを返して海外移住を推奨するのではないか。後は分水嶺がどこになるかの問題です。

実際に海外移住するかは別として、ロングステイでサービスの相場観を養うというのはありかと思います。例えば東南アジアで安さを享受しようと思えば、現地の人が利用する蠅のぶんぶん飛ぶ市場で、ラッピングされていない肉や魚を買うはめになる。

そこで「やっぱり日本は良い国だ」と思考停止するのではなく、物価が欧米並みに上がった時、サービスの質が東南アジア並みに下がった時、非労働者という立場でどう立ち回りどう社会参加するかという所に想像力を働かせる事は無益ではないと考えます。

正直言うと大きな流れとして国の衰退は避けられないでしょう。それがどういう形で顕在化するのか、増税・円安・サービスの劣化・あるいはその全てかもしれませんが、とにかく今は過渡期なので過度にリスクを取る事を慎み、注意をもって見守る事だと思います。